まこちゃんの週末iターン
いつからか呉からほぼ毎週末、島に通うまこちゃん。
釣りをしながら、バスで自由自在に町のなかを動き回る。持ち前のフットワークの軽さで、島の向こう側にいたと思ってたら、いつの間にか島のこっち側に移動している。コミュニティバスや時には高速艇、お店のオープン情報を組み合わせて自由に島の過ごし方を生み出していく。
まこちゃんは自分のことを「“小文字”のiターン」だと言う。大文字の、線で繋がったIターンじゃなくて、それこそ島のように離れた点と線を行き来するような、「住む」とも「旅」ともちょっと違う島との関わり方を、まこちゃんは教えてくれる。
そんなまこちゃんの大崎上島でのある1日を、一緒に過ごさせてもらいました。
霧雨のふるある日。10時に 観光案内所でまこちゃんと合流する。
10:16
大崎上島町役場前でさんようバス右回りに乗車。
窓ガラスにポツポツと雨粒。霧で海と空が溶けていきそう。
目線が高いので、いろんなものが目に止まる。
巨大な錆びたリール、岩壁に2つ並んでつけられたドア。
造船所の1角に進水式用のくすだまが置かれている。
10:59
明石農協前で、降ろしてもらう。
雨の日の島あるある、石垣に蟹たくさん。
明石ストアーでお買い物。
- 中華サラダ
- きんぴら
- おでん
- ちらし
- イカ天
を買う。夜はお好み焼きを食べようと言っていたので、お好み焼き用にサクラエビも。明石ストアーで売られている加工品は今治でつくられたものが多い。
川の流れる道が工事中。道路が広くなったり建物が取り壊されたりと島の景色は日々変わっていて、何気なく見た風景が、次に訪れた時にはもうなくなっていたりする。明石港まで、まちあるき。
11:40
明石港発 おと姫バスに乗り換え。
バスはふれあいの館経由で大串へ。運転手さん曰く、朝からお風呂に入りに来て昼前に帰るという、バスを利用した定番のお風呂コースがあるのだとか。
11:50
大串農協着
雨の海岸はとても静か。
東屋でごはんを食べる。食後に、まこちゃんがお湯を沸かしてコーヒーを淹れてくれる。おやつのお煎餅も。
まこちゃんのコンパクトなカバンからは魔法のように、アイテムが出てくる。釣り具、キャンプ用品、インスタントコーヒー、カラーペン、楽器…いつでもどこにいても楽しめるように選ばれたものたちだ。それらのアイテムと持ち前の発想力で、まこちゃんは「待ち時間」や「何もない場所」と言ったものを、想像や発見を楽しむ時間や空間に変えてしまう。
その後はポケットから各自楽器を取り出して演奏しながら踊る。演奏は適当でもなんとかなる。葉っぱから落ちる雨の音も音楽になっていく。
14:22
美浜荘 発 乙姫バスに乗車
14:34
大崎支所 着
ここでフルカワくんが合流、5人でミカタカフェへ。
コミュニティスペースでのんびりお茶時間。ここでも音楽会がはじまる。
歩いてトイセンター松原さんへ。
松原さんは釣具やおもちゃ、骨董を扱うお店。ずらっと並ぶ釣具に、釣りが出来なくてもワクワクしてくる。お店の一角に長島の地図がある。お店のお父さんから、昔長島は2つの島で埋め立てられて1つの島になったというお話を聞かせていただく。奥の長いテーブルの上には、お菓子の紙箱に入れられた古い写真が時間が止まったように置いてある。
次は青木ミートさんへ。
夕方のお肉屋さんは混んでいる。お店のお母さんたち3人が忙しそうに動き回っている。お好み焼き用に、基準肉というリーズナブルなお肉を購入。何が「基準」なんだろうとあれこれ想像して盛り上がる。
16:22
大崎海星高校前 さんようバス乗車
小学校時代に観光案内所によく遊びに来てくれていた中学生の子たちと一緒になる。
覚えていてくれて嬉しい。
16:36
大崎上島町役場前 降車 夜はみんなでお好み焼きを作って食べた。
自由自在に呉から尾道、今治や大崎上島などを行き来するまこちゃん。まこちゃんの旅の楽しみ方や島のことなどについて、いろいろお話しました。
話し手 まこちゃん(まこ)
聞き手 風待ちの編集室 てるい(てる)
「1時間あったら、冒険はできる。」
(てる)今日はまこちゃんいつもどんなふうに行くところ決めてるのかなとか、島に来てまた帰って、どんな変化があるのか聞いてみたいなと思って。
島とか尾道行こうかなって、いつ決めるの?
(まこ)平日からすでに週末どこに行こうって頭の中で思い描いているというか。まず何をこの週末はやりたいか、そこから始まって。時刻表とかを調べるんよね。自分はどっちかというと鉄道好き・鉄道マニアで。鉄道マニアの性質というか特技として、時刻表を見てどんな旅が楽しめるか妄想をするという特技があって。それが多分島でのバスの乗りこなしに生きているのかなと思ったりもするよね。
(てる)普通は待ち時間が長いとか接続が悪いとかは不便なことになっちゃうけど、それをまこちゃんはポジティブなことに変えてしまうなあって一緒に回ってて思って。空き時間すらも、その時間で街歩いたらいいじゃんとか。楽しみに変えちゃう。
(まこ)なんか1個やりたいこと決めといて、交通手段を調べて、調べたら他にも行けそうなところがあって、あ、ここもいけるなって思って。例えば朝白水港で釣りをするとして、その地合いが終わった後ぐらいの時間に、例えば地合いがおわるのがちょうど9時半ぐらいだったとすれば、そしたら「朝市行けるな」って。朝市も行けるし、日曜日だったら、竹本カレーも行けるね。
(てる)1個やりたいことを軸にそこに色々くっつけていくんだね。
(まこ)時刻表で行ける範囲で楽しめそうなことを後からかんがえる。
(てる)時刻表見てるとふわんと組み上がってくるの?
(まこ)そうそうそう。
(てる) 組み合わせがいつも面白いよね。今治行くならこの交通機関だけ使って行ってみようとか。いつもは通らないような経由で行ってみようとか。どうやって思いつくんだろうって不思議で。
(まこ)今まで今治行く時って、尾道を経由して尾道から渡船で向島渡って、向東の辺りに高速道路沿いのバス停があって、そこからバスに乗って今治に行ってた。だけどまっすぐ行き着くと面白くないなと思って。尾道行ってちょっとぶらぶらしてから行くとかだったらいいけど、尾道に用事がなかったら、今治行くときは最近は島経由が多いかな。なんか行ったことないところに行って見たいなという気がして。去年の夏に行ったときは、宗方とか大下島とかまわって。宗方もけっこう古い商店街があっておもしろいよあそこ。大三島の宗方。
(てる)宗方!行ったことあるけど、フェリー降りて、まっすぐ行くよね。あの辺りってこと?家はあるけど。
(まこ)そうそうそう。車が通る大通り沿いって、現代になってつくられたような道だから、あそこから1歩中に入ったらすごい古い商店街があるんだよね。ちょっとした屋根つきのアーケードみたいなのがあったりとか、すごい古い看板があったりとか。巨大なカセットテープみたいな機械があったりとか。あそこ面白かったんよね。
(てる)そんな15m20mのスポットを。それも乗り継ぎの時間?
(まこ)あれは確かね、乗り継ぎ1時間くらいあったんよね。1時間待っとくのもあれだから街を歩いてこようとね。でその後今治行くとき、そっから高速船乗り継いで大下島に行くんよね。大下島ってどこかって行ったら、清風館行ったら真っ正面に見えてる島。そこ行って、そっからまた船に乗りつぎ今治に行く。えっとね、時間としては天満港を1時何分かに出るフェリーで、今治に着くのが5時何分。時間はかかってるけど、面白いよ(笑)
(てる)移動がただ単に出発地から目的地まで行くことじゃないよね。行く途中もメインというか、めちゃくちゃ楽しんでる。
(まこ)しかも移動中にまた時刻表を見直してみて、到着が1時間か2時間遅くなるかもしれないけど「あっ、ここ行けるな」と思ったら行ってしまうという。ここ行けるねって。最初に行ったように、週末始まる前に何々をしようという軸だけは決めておく。そこから付随して、あそこ行こうここ行こうって。時刻表ってもう決まった時間だから、すごい制約が多いよね。この制約がある中から、いかに自由を生み出すかという、それを楽しむというかね。制約から自由を生み出す。元から自由なところから自由なことやったって特にね、当たり前っちゃ当たり前だけど、制約のあるなかから自ら自由を生み出して行くのがそれが面白いなあと思って。
(てる)決められた時間のなかで、そこは動かせないけど、その中でいかに自由に遊べるか。
(まこ)たぶん18切符の旅とかもそんな感じ。どこどこに行くというのは決めてるけど、一応最初に時刻表は調べるんよ。その行き先までの、行きと帰りとね。で、移動中にまた時刻表を見直して見て、「あ、ここ行けるや」と思ったら行ってみる。
1回18切符で日帰りで神戸に行ったことがあって。神戸でお昼にステーキ食べて何しようかなーと思ってたら、ステーキ食べてる間に思いついて、「そうだ関西には新快速という乗り物があるのだから、そのまま18切符で京都まで行ってしまえばいいや」って。いきなり神戸から京都にパワーアップした。
神戸が最終目的地だったけど、京都になっちゃった。帰ったの日付変わってから。帰りに乗り継ぎの間に姫路駅で1時間ぐらいあったんだよね。じゃあ1時間あったら駅の外出れるよねと。姫路の商店街のなかにすごいレトロなおでん屋があって、「あっこれ入りたい」と思って。
(てる)1時間で冒険してる。
(まこ)1時間あったら冒険はできると思う。ちょっと空いた時間があったらなんていうかな、普段からでも興味本位を満たす活動に使えるかなって。ちょっとした空き時間も。
(てる)興味本位っていうのは、この先になにがあるんだろうとか?
(まこ)そうそうそう。興味本位を満たすことに自分はけっこう楽しみを感じてるから。この島にもまだわからないことがいっぱいあって。
(てる)そうなの?ほぼ毎週来てるから、同じ場所ばっかりになったりとかしないのかなと思って。まだまだ知らないことがいっぱいあるんだね。知らないことがまだまだたくさんあると思えることもすごいよね。私も島に住んでいたら何十回も同じところに行ったら、わかった気になったりする。
(まこ)当たり前になってしまったら、面白くないよね。なんか当たり前をみずから壊しに行く感じ。最近ぶち壊された常識は、夕方白水港から竹原に行くフェリーで、途中垂水に寄るのがあるんよね。それまでずっとまさか白水で乗って垂水で降りる人おらんだろうと思ってたら、普通にいたんだよね(笑)しかも学生が何人か降りてって。いた!!って!
あれが確か何時だったかな。もうちょっと夏ぐらいになったら、夕陽の時間に合わせたらサンセットクルーズになるなって。夕方の6時35分。あの時間が日の入りにちょうど重なったら、サンセットクルーズになるよねあれ。
(てる)白水で乗って垂水で降りたら、5分くらいかな?
(まこ)5分くらい。フェリーだから座席あるし、ちょっとしたおやつかお茶を持って行けば、サンセットクルーズだよね。
(てる)なるほどー!まだまだ島でも発見いろいろあるし、楽しめるね。
(まこ)その楽しみの発表の場が最近は風待ちの広場になってるかも。島もそうだし尾道もそうだし、狭かったり制限がやっぱり多いと思うけど、制限が多い環境だったら人ってみんな自由を探す方向に行くんかなって気がする。逆に何の不自由もなかったら、逆に秩序をつくりたがる、そんな気がする。自分の勝手な考えだけど。
(てる)そっか。自由を求める人たちが集まってくるみたいな。
(まこ)そうそう。自由がないから、自由を求めてしまうみたいな。結果自由になっていく。制約の中で生きづらい思いをして来た人もけっこういるだろうという。そういう人たちって、制約の中でいかに自由をみつけて楽しんでいくか、その術を知っているっていう感じはするかもね。不自由がもたらす自由みたいな。自分の場合時刻表という制限がもたらす自由。
(てる)何かそこで軸が決まるもんね。このフェリーに乗ろうって出発時間が決まったら、そこから合わせていろいろ決まっていく。
(まこ)それで付随していろんなものをつけていく。軸だけ決めるけど、あとは思いつきってことが多いかもしれない。今日のパターンは、午後3時から歓迎会があるから、それまで何しようかなーって。試しに徳森の開店時間にいってみたらどうかなと思って。徳森って開店が10時半なわけよね。10時半でも並んでるんだよね。3組並んでて、さらに予約の人もいるという。高校生みたいな2人組と、おばあちゃんが1人と、自分の3組。
(てる)徳森に10時半から。その発想はなかった。でも開店ダッシュってなんか楽しいよね。
(まこ)うん。あれと同じ、漁師まつりがはじまる瞬間に近いものがあるよね。わーって集まってくる。
(てる)時間が違うだけでいつも行ってるお店も違う風に見えてきたりもするしね。
「自分のお手本は、自分。」
(てる)前にまこちゃんがフェリーで島から帰るときに切なくなるみたいな話をしていて。住んでるとだんだんそれがわからなくなってきたりもするんだけど。
(まこ)なんか本土におったら、本土の人たちが生み出す時間軸にこっちが合わせて行かなきゃいけないような感じがするんだけど、この島の人って、1人1人個々の時間軸があって、それを皆んなが理解しているというか。上手くみんなが向こうから合わせてくれたりとか、比較的なんか居心地がいい感じがする。尾道もおんなじような感じがあるけど。時間軸のリーダーがいて、それについて行け〜みたいな感じはない。
(てる)確かに、それぞれが自分の時間軸で動いているような。時計だけじゃなくて。こないだも観光案内所に常連さんたちが来てて、夕方になったら「おー、潮が引いて来たや、わかめ拾いにいこうやあ」って帰って行ったんだけど。あーいいなあ、潮が引いたからわかめ拾いに行く時間軸いいなあって。
(まこ)なんか全体的な時間軸じゃなくて個々の時間軸で動いている。そうすると時間軸同士がリンクしあって上手いこと回ってるみたいな、そんな感じがある。
(てる)決して時間という概念がないわけじゃないんだけど、個々人がそれぞれの時間軸で動いてて、バスはバスの時間軸で動いてて、みたいな。
(まこ)逆に本土の時間軸で平日を過ごしてきたから、自分の時間軸に島に来たら立ち帰れるというか、ある程度リセットしに来ているんだろうなと、そういう気もせんでもない。
(てる)あー。私は島に来て、時間軸もそうだし、世界観とか、自分はこれを大切にして生きたいっていう感覚を確かめられた気もしてて。例えば言葉にする以外にも、踊るっていう表現方法もあるよとか。そういう1個の「これで動かなきゃいけない」っていう価値観から自由になれる感じがするなあって。
(まこ)なんていうか、人が少ないからそれができるっていうのもあるかもしれないけれど、自分が合わせるものがないというか。合わせるものがないから、自分の見本は自分しかいないって状態だね。「自分のお手本は自分」っていうそんな状態になるんだよね。
(てる)俺についてこい!みたいな人がいて、それについて行くじゃないもんね。それが許されるというか、それでいいじゃんっていう空気もあるよね。
(まこ)結構島の人ってあの人にはあの人の世界があるっていうのがちゃんと理解できてる人が多いと思うよ。だからうまく回ってるというか。制約があることを意識した地域の人って結構なんか違うのかもしれない。向島(尾道市)なんかそうかも。向島も渡船があるけど、確か渡船の終便が10時までしかないから。だけど向島の人ってすごい生き生きしてる感じがする。尾道から100mくらいしか離れてないのに、なんでこの人たちこんなに穏やかで自由なんだろうって。
昨日も渡船乗って、「ああ、向島もちゃんと島だったんだ」って思ったもん。フレスタとかエブリイとか、店があるから本土化してるような感じに見えるけど、でもやっぱり人間は島のまんまだなって思う。あれを見てからすごい安心した。
(てる)向島。前まこちゃんが油そば屋さんまで連れてってくれたときの、街並みの中を通って昔からのお店があって懐かしくなる感じとか。すごい大崎上島にも似てる。パン屋さんがあって、商店があって。なんか島って、懐かしいよねえ。
大崎もそうだけど、昔の記憶があちらこちらに眠ってて、そういうものが目にみえて残ってるとかもあるし、お話聞いて「こうだったんよ」って知ることもあるし。そうなったときに今と過去の間がつながるというか、昔も今の私たちが歩いていることろにちゃんと「ある」って感じれる。
(まこ)完全に塗りつぶされてないよね。
(てる)完全に消されて上書きされてるわけじゃない。それがちっちゃい光を発してて、それに「ん?」って気づけるというか。
(まこ)この島の面白いところは、もともと島に道路がなくて、すべての集落に船で行くしかなかったから、集落ごとに違う文化が残されている。ひとつひとつ探って言ったら本当に面白いかもしれない。
(てる)こっち側と大三島側も景色からしてぜんぜん違うし、明石に行ったら明石ストアーでは今治のものを売ってる。海の上が道だったんだ、だからこことここの文化が違うとか、島を知れば知るほど見えてくるのが面白いなと思って。今大崎上島って一つの町になってるけど、その中に今の行政区や道で考えるだけでは分からないことが潜んでいるっていうのは、考えたら面白くて飽きないね。
(まこ)単純に外表とメバルザキでも全然文化違うだろうしね。両方旧東野町なんよね。なのになんか全く違う。この狭い範囲で違うっていうのは面白いよね。
(てる)そうだね。本当に興味は尽きません。
(まこ)ちなみに今日の発見はね、大西港降りてすぐのところ、釣り吉三平が書いてある、清風館こっちの看板があるところ。あの中に無人販売所がオープンしてた。まだいっぱい置いているわけじゃないけれど、これね。(写真を見せてくれる)
(てる)えっ、ほんとだ、誰だろう。
(まこ)先週なかったよなーと思って。
「自由を生み出す実験場」
(てる)島は昔のことを見つけるだけじゃなくて、気付いたら新しいのができてたりなくなってたりする、というのもよくあるよね。
(まこ)地味に新陳代謝をしている感じ。学校があるから3年おきに強制的に新陳代謝されているというのはあると思うけど。
(てる)海星高校も毎年生徒さんが入ってきて卒業して、新しいことがどんどん生まれていくもんね。
(まこ)そう。今日も新入生に刺激を与えて来ようかなと。(まこちゃんはこの日、海星高校の新入生と島の大人の交流会に参加するために大崎上島に来た)
キャンバス用意したから、風待ちの広場でやったワークショップをやろうかなと。今までの学生生活で制約を受けてきたかなとも思うから。だから島に来て、ここまでやっていいんだってのを、それを思ってくれたらいいなと思う。大人がここまでやっていいんだみたいな。都会の高校生からしたら、交通の便もめちゃくちゃ不便で制約だらけだけど、その制約があるなかから自由を生み出しているという、その素晴らしさを知ってほしいよね。自分で自由を生み出すことって、本当に子供からすれば自分の自我を生み出すことじゃけえ。ある意味そういう意味での教育の島なのかなって。自分を生み出す場所みたいな感じやね。
(てる)自分を生み出したり見つけたりする場所。
(まこ)という意味での、「教育の島」ということを考えてもいいんじゃないかなって。教科書の内容を知るだけじゃなくて、自分を知る場所みたいな。
(てる)限られている場所でどう楽しさを見つけるかって、けっこう生きて行く力、生き抜く力のような気もするし。
(まこ)制約のある場所から作り出した自由は本当の自由かもしれないよね。この島にいたら、自由ってどこかからもたらされるものじゃなくて、自分でつくるものになっていく、そんな感じはあるよね。自分で自由をつくるみたいな。ある意味風待ちの広場なんかその実験場よね。
(てる)自由を生み出す実験場か…なぜまこちゃんが島で楽しく動いているのかがわかってきた気がする。自分で自分の遊び場を作っちゃう感じだよね。
(まこ)だって乙姫バスの時刻表にしても、たぶん初めての人にはけっこう使いづらいと思う。
(てる)確かに乙姫バスは路線も分かれているし、島の地形や地名を把握していないと最初は難しいよね。だからまこちゃんが来るまで、バスを観光に使えるなんて思ってもみなかった。そしたら、なんか島外からやって来て、バスを使ってすごい楽しんでる人がいるーって(笑)
(まこ)「鉄道マニアの知恵」みたいな
(てる)ほんと、「鉄道マニアの生きる知恵」だよ。
(まこ)時刻表だけで旅の予定を妄想できる人たちって結構いるからね。鉄道マニアのなかで。特に「乗り鉄」と言われている人たちのなかには。
(てる)その鉄道の妄想力がまこちゃんの原点なんだね。
(まこ)こうやったら楽しいかなーみたいな。
(てる)いや、めちゃくちゃ面白いお話だった。そろそろバスの時間だね。
(まこ)デマンドの名前で登録してるから、ひょっとすればそこまでバス来てくれるかもしれないね(笑)
(てる)「あー、いつもあそこから乗る人か」みたいな。バスの運転手さんの記憶力すごいよね。どこで降りるって言わなくても「あそこじゃろ」って停めてくれる。
(まこ)なんか公共交通でありながら、ちゃんと血が通ってるなって感じがする。都会の公共交通だとほんと歯車の一部みたいになってるけど、ちゃんとこの島だと生きているなあって。都会のバスが普通のバスだとしたら、島のバスはネコバスみたいな感じ(笑)
(てる)本当に冬とかは夕方暗くて、小原あたりで山道の森の向こうからバスがライトつけてやって来るの見ると「ネコバスだあ〜って」なる(笑)
(まこ)デマンドはリアルネコバスだよね(笑)
(てる)行き先が「カシャーン!大西港!みたいなね」。おっ、もうあと2分。
(まこ)ちなみにもう100円(運賃)はすでにポケットの中に入っておりまーす。
(てる)完璧だ!
(まこ)多分これから新入生にさっきしたのと同じ話をする(笑)制約のなかでいかに自由を探すかという。
(てる)新入生にドカンと。
(まこ)「自由は自分で作るものです」「自分でつくった自由こそ本当の自由です。」って。
(てる)か、かっこいい…! 新入生に島の大人をみせてきてください〜。
取材協力 まこちゃん
取材・編集 てるい ひろえ
写真 Kazuhiro sorioka
イラスト おおた ともゆき
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